東京ちんも日記

生。社会。すべてが、てんこ。

ちんこ 夢かうつつか

歩き疲れた。ぼくは高円寺で髪を切り服を見て回ってから横浜に来たのだった。横浜でも同じように服と、それから古本を物色した。とはいえいつもと同じように目当てがあるわけではなかった。ただの時間つぶしにすぎないのかもしれない。それはぼく自身にも分からない。

横浜にきた目的である美術館に足を向かわせる前に、喫茶店で少し休むことにした。あわせて遅い昼食をとった。トーストとスパゲティとアメリカンコーヒーのセットを注文すると、いささか場違いに思われる客がやってきた。

足取りがおぼつかない老人と若い女の組み合わせだった。老人はテーブルにつくにもおっくうそうに膝を曲げた。女はその孫らしかった。とはいえ服装が派手に過ぎたので、同伴かとも思われた。黒い縞模様のワンピースの背中が大きくあいており、明るい色をした髪がまっすぐにおりて露出した肌を覆っていた。二の腕の肌は薄い褐色で、無邪気な話ぶりとあいまって快活な印象だった。かなり高いヒールをはいていた。

男の方はガンを切って急に衰弱したぼくの大叔父を思わせた。女の話をじっと聞き、ときおりゆったりとした口調で質問を投げかけた。

2人は明日、誰かの通夜に行く話をした。それから女は飼っている犬の寿命と、動物病院の費用がかなり高額であることを話し続けた。レントゲン1枚とるにも2万円近くかかるらしい。また女は亀も飼っており、亀が'囲い'から逃げ出そうとする姿の愛らしさを熱心に老人にしゃべった。