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東京ちんこ倶楽部 〜哀しみのLast dance〜

生。社会。すべてが、ちんこ。

東京ちんこ日記 2014年7月26日(土) ―涙目のサイリウム― (その2)

 ももクロのライブに足を運んだのは初めてだった。これまではライブビューイングでしか見たことがなかった。とはいえLVは映画館という空調が整った快適な空間で観覧できるし、スクリーンいっぱいにももクロのアップが高画質で常に映し出され続ける。だから、ぼくはわざわざライブ会場に行く必要があるのか疑問に思っていた。ライブ会場では席によってはももクロが米粒くらいの大きさにしか見えないかもしれないし、暑さで熱中症に倒れてしまうリスクもあるだろう。映画館のように、曲の合間に手洗いにいくことなんてとてもじゃないができないに違いない。はっきり言ってそのようなデメリットは想像通りどころか想像以上に大きかったが、それでもライブに行けてよかったと思えた。少なくとも今回は。

 ももクロの歌と踊りを楽しむという点では、とてもじゃないが満足はできなかった。ぼくの席は1Fスタンドの、ステージからほぼ直角に右手側だった。ちょうどステージを横っ面から眺めるかたちになった。スタンド席の中では、1Fで、しかもかなり前の方という好条件だったにも関わらず、ももクロの姿は、米粒までとはいわないが、豆粒くらいには小さかった。しかも真横から見るので踊りなんかぜんぜん分からなかった。おまけに、こういうときにメインで見るべきステージ脇の巨大スクリーンが、空中に吊り上げられたスピーカーにかぶってよく見えなかった。そんな事態を想定していたのか、申し訳程度に、ちょうどぼくの正面、ステージから見れば左側のスタンドの上にもスクリーンがあったが、それはサイズが小さくて臨場感に欠けた残念な代物だった。

 このような、ももクロを見るにはあまり十分とはいえない設備でも、ぼくが行ってよかったと思えたのは、ありていに言えば会場との一体感ということになる。その熱量はすさまじかった。ぼくは過去に今回と同会場の日産スタジアムでロックオデッセイなる有名ロックバンドが多数参加したフェスのようなものに行ったことがあるが、そのときと比較しても凄まじいものがあった。7万人のモノノフ達が推しの名前を叫ぶとき、地鳴りが生じたかと思ったくらいである。彼らの叫びは、スタンドを揺るがし、スタジアム内の空気を何度も反響するのがよくわかった。ぼくがこれまで生きてきて時折眺めてきた集団的熱狂のどれよりも、はるかに大きいエネルギーが発されていた。また視覚的にも大変貴重なものが見れた。サイリウム(ペンライト)の光の洪水である。日産スタジアムは、大変広かった。都内に暮らすぼくにとっては、向かいのスタンドを眺めるだけでも不安になるような広さがあった。それくらいの距離があった。そんな広大な空間を、サイリウムが埋め尽くしているのである。しかも一人ひとりのサイリウムが、推しの色はもちろん、振り方のくせまでくっきりと見える上に、それがおおよそ7万人分も一斉に、ももクロの楽曲にあわせて揺れまくるのである。それだけで一大スペクタクルだった。特に空が黒くなってからは実に美しかった。時間がたつにつれ、ステージよりもスタジアム全体を眺めることの方が多くなっていったくらいだった。モモクロほどのアイドルのステージでなければ、他にはどんなところであっても見ることができなかっただろう。

 そのような個人的に前例のない巨大なスケールの驚嘆の前では、ステージ演出で行われた放水をもろにかぶって全身びしょぬれになり、家に帰り着くまでズボンとパンツが乾かず、ライブ後の居酒屋での打ち上げの際に震えるほど寒かったことなど、瑣末な問題である。それにしても恐ろしい水量だった。ぼくがいた席のちょうど目の前くらいにまるで大砲のような放水機があったのだが、そこから上空に発射された水が最初にぼくの頭上にあらわれたときは、のんきに笑顔で落ちてくるのを待っていたものだが、水の粒が体に触れたとたん、その重みに驚き、あっかたまりだッ!と思わずうずくまり、続けて風呂桶をひっくり返したような水がさばんと降り注いできた。ぼくの周囲十数名の客から悲嘆とも歓喜ともとりがたいただただ驚きの声が漏れた。しかもそのような常軌を逸したかのように思える放水が、その後も、ももクロの人気楽曲に合わせて何度も繰り返されたのである。ぼくらはもうやけっぱちでサイリウムを振って推しの名前を叫び続けるしかなかった。なかなかに楽しかった。

 もっともぼくにとってもライブのハイライトは、しおりんが、なにかの曲で、アリーナの周囲にぐるりとめぐらされた花道を、歌いながら走っていた途中で、ちょうどぼくの目の前に立ち止まり、ぼくとしおりんとの距離がわずか10メートルばかりになったと思われたそのとき、まさにその場所で、1フレーズ分か2フレーズ分か、なんの曲かは忘れてしまったが、そこで踊ってくれたことである。あのとき、確かにしおりんはぼくを見つめていた。ぼくははじけんばかりの喜びに全身を包まれて圧倒的な多幸感の中でしおりんしおりんと叫びながら狂ったようにサイリウムを振り続けた。

 

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