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東京ちんこ倶楽部 〜哀しみのLast dance〜

生。社会。すべてが、ちんこ。

話しかけられたくない新人がいる。

 話しかけられたくない新人がいる。
 彼とはよく喫煙室で一緒になる。というか、彼がぼくや他の喫煙者の後を追って喫煙室に入るらしいのである。
 彼が悪い人間でないことはよく分かる。それどころかある意味ではある種の人々にとっては彼ほど付き合いやすいタイプというものはあまりないかもしれない。彼は初対面でどんな相手と接しようとも、緊張することがない。また沈黙することがない。だから気まずさを感じることがないのである。これは初めて会う相手と共通の話題が見つけられないような人間にとっては非常に楽である。放っておいても向こうが勝手に喋ってくれる。しかも気の利いた返しなどしなくても気持ちよさそうに話し続けているのだ。
 問題は彼が自分ばかりが話したがることとと、話の内容が凡庸でかつ相手が自分の話で楽しんでいるのかをまったく気にしないことと、相手が話すのをさえぎってまで自分が話したがることと、目に表情がなくてある種の不気味さを感じることと、先輩も含めた周りの人間に対してまったく敬意が感じられないことと、相手に話す間を与えることがないほどに自分がしたい話を始めたら最後まで発語をとめないことである。
 新人はともかく、ぼくだけではなくて多くの先輩社員が彼のことを表でも裏でも快く思っていないのであるが、彼はそれも意に介さないようなので、ぼくはもうあきらめている。