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東京ちんこ倶楽部 〜哀しみのLast dance〜

生。社会。すべてが、ちんこ。

電車がこない

  長いエスカレーターを何度も下ってぼくは東横線のホームにいた。
  外は雨が降り冷たい風が強く吹いていて、スーツの下半身はじっとりと濡れていた。ズボンの後ろポケットにハンカチを入れていたのでそれで軽くふいた。しかし染み込んだ雨は変わらずぼくの体を冷やし続けていた。
  ハンカチは東京駅の中でたまたま見つけた店で買ったもので、一枚買ったものを気に入り、後日営業で近くを訪問した際、店に寄って五枚ほどまとめて購入した。そのうちの一枚だった。淡いギンガムチェックの柄はいつでもなぜかぼくの心を落ち着かせた。
  パターンというものがいいのかもしれないとぼくは思った。無限に広がる格子。どの一部だけをとって見ても他の一部とまるきり同じで、永久的な反復が予感される。
  ぼくのそばで中年の女性がコートを脱いだ。ホームには風が入らず空気が淀んでいた。ぼくが降りてきた同じエスカレーターから何人かのスーツ姿の男達がおりてきて、皆同じように線路を見た。そして電車の姿がないのを確認してから歩みをゆるめ、ホームにできた列に加わった。
  しかし、列は伸びつつけたが、いつまでも電車が来ることはなかった。