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東京ちんこ倶楽部 〜哀しみのLast dance〜

生。社会。すべてが、ちんこ。

昼と夜

  サラリーマンなら毎日何時まででも働き続けることができるという前提のもとに、この社会は成り立っているのだろうとぼくは考えた。でなければ自分の仕事がこんなに多いはずがない。
  またぼくの周囲で日常的に営まれてる経済的営為も、ぼくのようなサラリーマンから毎日昼も夜もなく小金を抜き取ることで存在しているように思われる。例えばぼくを会社へ、またマンションへ連日正確なダイヤで送り届ける交通機関や、朝だろうが夜だろうが仕事中の空腹に即座になにかしらの食物を有償で提供するコンビニエンスストアなどがそうである。
  「働けるだけ働かないのは、罪だ」とぼくは考えた。会社からは次から次へと仕事が与えられる、それは一日にたとえ16時間働いたところで完遂できるか分からないくらいの量だ、それに社会の側では自分が24時間働くのを見越して様々なサービスを提供してくれる。であれば生きている間は常に働いて金を稼ぎ、そして稼いだ金を社会に還元していくのがまっとうな道ではないか。
  ぼくはそう考えて昼夜ぶっ続けで働いていたが、思考とは裏腹にぼくの肉体や精神が痛み始めるまでにそう長い時間はかからなかった。最初は頭にもやがかかったように一つの仕事に集中することが難しくなった。簡単な事務作業をひとつ終わらせるまでに、他の仕事に対する不安やら、朝食べた食事のことやら、過去に訪れたことのある街の光景やらの雑多な観念が、次々と浮かんではその度にぼくの思考と時間を奪って消えていった。そうしていつの間にか失われた時間に気づいては目を見開いたものである。ぼくはデスクでパソコンのディスプレイを眺めているにも関わらず半睡のような状態に陥ることがしばしばだった。一方で、夜中にささやかな眠りの時間を持とうとする時にはありとあらゆる不安や緊張が頭をもたげてぼくの精神をせめたて、眠りを妨げた。ぼくの頭には昼と夜が失われてしまった。