東京ちんこ日記

生。社会。すべてが、ちんこ。

東京ちんこdream 3

ぼくが電車に乗っている時に雷が鳴った。とても大きな雷で電車の屋根に槍でも降り注いだようだった。ぼくはBOSEのヘッドホンでトーキング・ヘッズの「サイコ・キラー」を聞いていた。クリス・フランツの律儀なビートがディビット・バーンによる印象的なフランス語のサビまでぼくをせっせと運んできたところだった。

驚くほど白い肌の痩せた女がマスクをつけてぼくの真向かいに座っていたのを覚えている。気が付いた時にはその女どころか座席の乗客たちはみんな影も形もなくなっていた。それどころか自分が電車の中にいるのかどうか不確かだった。そこは暗闇だった。冷たい風が吹いていて、ぼくの感覚に訴えかけるものはそれだけだった。BOSEのヘッドホンは失われていた。カバンもなかった。服を着ているのかすらわからなかった。そして状況を確かめようにもぼくの体はぴくりとも動かなかった。

でもぼくは怖くはなかった。いったいいつからそうして暗闇に包まれているのもまったく気にならなかった。雷はついさっきぼくの電車を襲ったのかもしれなかったし、それはもう30年も前のことなのかもしれなかった。しかしそんなことはどうでもよかった。ぼくはただそこに立っていた。時折冷たい風がぼくの頰を撫ぜた。