東京ちんこ日記

生。社会。すべてが、ちんこ。

東京ちんこ日記 犬の墓参りに行った話その1

 飼い犬の墓参りに行った。母は週に2、3度は必ず足を運んでいるらしく、ぼくもそれに付き添った。そんなに参りに行っているとは驚きであった。しかも墓はバスに乗って30分はかかる遠方の山合いにあった。母の父、つまりぼくの祖父も去年の同じくらいの時期に亡くなったが、母が祖父の墓参りに行ったとは聞いたことがなかったので、なんだか不思議な感じがした。

 墓とはいっても人間のそれのようにお寺の裏に墓石が並んでいるような立派なものではなかった。ペットの墓場は山肌の木を切り倒して地面をコンクリートで固めただけの見た目に粗末な場所だった。また人間の墓ならば4、5軒くらいしか入らないような狭さだった。それぞれのペットの墓は座布団の半分にも満たない小さな大理石の板に実に簡単な長方形の墓石がのったものだった。大理石の板の上には、墓石の他に白いプラスチックのプレートが置かれていて、だれそれ家の○○ちゃんの墓と黒文字で書かれていた。またあわせてペットへの一言メッセージが添えられていた。それらは○○ちゃん本当にありがとう、といったシンプルなものが過半だった。

 ぼくの犬には墓石がなかった。どうしてなのか、ぼくが東京にいる間に亡くなったので詳しいことはしらない。墓場を上がったところにみすぼらしく狭いバラック小屋があって、母のあとからそこへ入った。仕組みはよく分からないが、そこでお線香をあげた。バラックの一面は棚になっていて、手のひらに乗るような小さな骨壺がたくさん並んでいた。その反対側の壁にはおびたたしい数のペットの顏写真が貼られていた。犬が多かったが、少なからず猫もいたし、中にもウサギやインコもいたかもしれない。誰かが管理しているのか、写真のサイズはきれいに切りそろえられて整然と並んでいた。並々ならぬ執念のようなものを感じた。

 墓場をくだると管理者の住居兼事務所があった。玄関を入るとすぐにカウンターで母はそこであいさつをした。二人の男がいて、一人はここの代表らしい中年の恰幅の良い丸顔の男だった。ずっと商売でもやっていたのか常に笑顔を絶やさなかったが、なにかに困惑して仕方なく笑っているように見えた。笑顔がはりついてしまっているようであまり愉快な印象を受けなかった。もう一人はその息子らしい茶髪の若者で、その茶髪と黒々と焼けた肌がうす汚く、なにも考えていない呆けたような表情の男で、あまり好ましい青年ではなかった。