東京ちんこ日記

生。社会。すべてが、ちんこ。

頬の北斗七星

心療内科うつ病の診断をくだされたので、それを電話で両親に報告したところやはり心配された。とはいえ、症状はそれほどひどくはなく、日常生活には支障がないくらいだったので、ぼくは両親を安心させに九州の実家に帰った。

 

あまり心配だとかを表に出さない両親であったが、今回ばかりはさすがにたくさんの話をした。30代の後半にもなるのにうつになって仕事を休んで帰省したぼくはさすがに自分を情けなく思ったが、両親の気持ちを感じて心がすっと楽になった。田舎の街の東京よりいくぶんのんびりとした雰囲気や間延びした方言での会話も、厳しい仕事に疲れきったぼくには心地よかった。

 

滞在は数日間の短いものだった。今朝、仕事に出る両親と別れ、喫茶店で一服して、ぼくはバスで空港へ向かった。ぼくの予想とは違ってバスはひどく混雑していて、東京の満員電車と変わりないくらいだった。ぼくの目の前には2人の若い女の子がいた。2人とも目の覚めるような鮮やかな口紅をつけていて、1人はフェルトのキャスケットをかぶっていた。田舎へ旅行にきていた学生らしく、その幸せな余韻を楽しんでいるようだった。バスが動きだした。ぼくはヘッドホンをつけてナンバーガールの最後のアルバムを聞きながらバスの窓に流れる田舎の景色を眺めるともなく眺めた。

 

空港でお土産を買おうか迷ったが穏やかな帰省でもなかったし実家に帰ることは誰にも言っていなかったので控えることにした。手荷物検査場に並んでいると、ぼくの後ろにバスで一緒になった女の子達がいることに気づいた。1人がこんな話をしていた。幼いころ、頬に北斗七星みたいに並んだほくろがあって、そのうち北極星となるべきほくろもできるのだろうと思っていた。でも、然るべき場所にほくろはできなかった。その代わりになくてもよい場所にばかり、ほくろが増えた。