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東京ちんこ倶楽部 〜哀しみのLast dance〜

生。社会。すべてが、ちんこ。

成長の神様

昔々、あるところに、3人の神様がいて、日々、1000人の怠惰な人間達を、働かせていました。

3人の神様の名は、報酬の神、昇進の神、成長の神といいました。

ある日、神様たちは、ただ、人間達を働かせるだけでは面白くないので、誰が一番多くの人間を働かせることができるか、競争しようと、思いつきました。

報酬の神「私が勝つに、違いない。人間が働く理由は、報酬にこそ、あるからだ。」

昇進の神「私が勝つに、違いない。人を見下す快感を、誰もが、欲するはずだから。」

成長の神「私には、勝つ自信がない。私のような抽象的な概念が、人を動かすことなど、できるまい。」

勝負は、ある夏の日曜日、人々が、各々の家で酷暑をしのいでいるときに、始まりました。まずは、報酬の神の番です。

報酬「人間達よ、働け。これから会社に出て、月曜日の朝まで働いた者には、夏の賞与に、給料の3日分を、特別に上乗せするぞ。」

すると、どうでしょう。人々は、わらわらと家から出てきて、会社へ向かったではありませんか。その数、800人。彼らは、オフィスの冷房をつけっぱなしで、月曜日の朝まで、たゆむことなく、働きました。

報酬「どうだ、人間の8割を動かす、報酬の力を、思い知ったか。」

昇進「はっはっ。なかなかやるではないか。どれ。次はぼくの番と、いくか。」

昇進の神の順番は、次の火曜日となりました。その日は、大型の台風が日本列島を縦断していて、勝負の場所となった東京は、公共交通網がすべて寸断され、復旧の目処がたたず、出社は、困難を極めました。

昇進「人間達よ、働け。心を惑わす、恐るべき昇進の力を、見せてやるぞ。今日出社して働けば、お前たちの上司を左遷させ、お前たち自身を、上司の地位にあげてやろう。」

すると、どうでしょう。人々は、我先にと家を駆け出し、暴風雨もなんのその、会社に、向かい出したではありませんか。結果、900人の人間たちが、出社に成功しました。

昇進「どうだ、人間の9割を働かす、昇進の力を、思い知ったか。」

こうして、最後の、成長の神の順番が回ってきましたが、成長の神は、2人の神様の力を見て、おびえ、震えていました。

成長「彼らは、まるで化け物だ。ぼくには、とてもこんな芸当は、できそうにないぞ。」

勝負は、翌日の水曜日となりましたが、人間たちは、みな、激しく体を冷やし、ひどい風邪で、寝込んでいました。

すると、成長の神の心に、ある変化が、起こりました。

成長「平日だというのに、風邪で寝込むだなんて。どれほど、やる気がないんだ。やつら全員に、労働の基本である、成長の精神を、思い出させてやる。」

成長「ぼくには、わずかばかりの給料も、お情けの昇進も、与えることは、できやしない。ぼくが与えられるものは、なにもない。でも、そんなことが、いったい、どうしたというのだろう。成長したいという強い意欲、終わりなき成長へのとどまることを知らない欲求こそが、ビジネスマンの魂じゃないか。人間たちよ!思い出すんだ、成長の喜びを。そして、歩もう。果てしない、成長の道を。」

すると、どうでしょう。風邪で寝込んでいた人間達が、次々と立ち上がり、スーツに着替えて、出社していくではありませんか。その顔つきは、まるで別人のよう。報酬も、昇進も、なんの見返りも求めていない、純粋で、ピュアな、まさにこれが、本物のビジネスマンに、ふさわしい相貌ではないでしょうか。

1000人の人間たちは、這いつくばりながら、全員、無事に出社を達成いたしました。彼らの顔つきは、人間というにはなにかが違う、人間というにはあまりにも尊い、まさに、真のビジネスマンの、顔つきでした。

成長「どうだ、あらゆる人間を動かす、成長の力を、思い知ったか。」

これを見て、報酬の神と昇進の神は、成長の神に、ひれ伏しました。

報酬「ボーナスなどという俗悪なもので、すべての人間達を動かせるはずが、なかった。人間の心の奥底から湧き出る成長への欲求、それこそが、人間たちを、真のビジネスマンたらしめるものであった。」

地位「昇進などという下世話なもので、すべての人間達を動かせるはずが、なかった。人間の心の奥底から湧き出る成長への欲求、それこそが、人間たちを、真のビジネスマンたらしめるものであった。」

成長「わかれば、いいんだ。しかし、報酬くん。君ががんばれば、人間たちが働くたびに企業の財源が減り、やがては、たくさんの哀しい倒産を、うむだろう。そして、昇進くん。君がはりきれば、平々凡々と暮らしている、中堅ビジネスマンたちの生活を脅かすことに、なるだろう。それらは、とっても、よくないこと。だからこれからは、ぼくが、人間たちを、働かせるよ。彼らが、真に純粋な、100%のビジネスマンに、なれるようにね。」

これを聞いた報酬と昇進は、とどまることを知らない涙に、いつまでも顔をかきぬらしながら、日本を去っていきました。

残った成長は、雨の日も風の日も、土曜日も日曜日も、お盆も正月も、人々に、真の成長とはなにかを教え続け(それは、報酬も昇進も必要としない、真に純粋な労働の喜びでありました)、人々は、無償の労働の喜び、成長の尊さを噛み締めながら、幸せに暮らしたのでした。