東京ちんこ日記

生。社会。すべてが、ちんこ。

2017年の憲法集会(5月3日)

なにもすることがなかったので、新宿まで出て、ベルクという店でカレーセットを食べた。ぼくがレジに並んでいる間にモーニングセットの時間が終わったので、仕方なくカレーセットを食べた。でもそれはそれでうまかった。ぼくは久しぶりにベルクのカレーセットを食べた。カレーについてくるコーヒーはブレンドコーヒーにした。世の中にはいろいろな味のコーヒーがあるが、ぼくは酸味が強いものは苦手である。ベルクのコーヒーはそうではないタイプであるので好きだ(タイプ、という言葉をコーヒーに関して用いるのは自分のコーヒーに対する愛着や知識のなさや、あるいは単純に語彙力のなさを露呈することになりそうであるが、致し方ない)。


ベルクは新宿駅の東口のすぐそばにある。新宿駅の東口へ入るには地上から地下へ階段を下りなくてはならない。ベルクはその地下への階段を下りてすぐそばのところにある。だからぼくがベルクを出たとき、東口の地上の広場で(それはちょうど笑っていいともで有名なスタジオアルタの目の前にある)、憲法記念日ということでどこかの政党(おそらく自民党ではないだろう)が憲法についての街頭演説を行っていたとしてもおかしいことではなかった。ベルクを出て最初に耳に入った騒音がそれだった。


ぼくはなにをするか決めかねていた。今日という一日をどう過ごすか明確にプランをたててはいなかった。それどころか、自分がいったいどういう人間かも本当には分かっておらず、どういった欲求を抱いていて、どういったきっかけでどのような欲望が喚起されるのかに関しても無知を極めているのに等しい状態だった。新宿にはぼくが普段訪れる場所がいくつかあった。それはイタリアントマトカフェジュニアの地下にあるJAZZ喫茶のDUGだったり中古レコード屋だったり時代遅れになりつつあるテイストの服屋だったりした。でもぼくはそういった自分にとっていわゆる定番となっている場所に行くのはどういうわけだか気が進まなかった。それはきっと今日が世間的にいうゴールデンウィークであるからだった。ぼくの知り合いにはロックフェスに行ったり旅行に行ったり飲みに行ったりしている人がたくさんいた(ぼくはそういったものをすべてFacebook経由で知った。友達とは言っても特に交友がないからである)。理想はともなく、現実的にはぼくは人間が平等だとはまったく考えていないが、それでも、知人らのそのような全世界に向けた様々なとても愉快な報告が、ぼくに、いつもと変わらないさえない時間のつぶし方への嫌悪感のようなものを催させた。ぼくもどこか新しくこれまでに知らない素敵な場所に行きたくなった。でもそんな場所がいったいどこにあるのかぼくには見当がつかなかった(ノウハウさえあればこの世界の大体の情報に瞬時にアクセスできるスマートホンという道具を多くの人々と同様にぼくも所持しているのだが、ぼくが本当に求めている情報を得るにはなにをどこから探せばいいのだか、ぼくはいまだに良く分かっていない)。

 

歩き出してから目的の場所を決めるのは面倒なので、ぼくはとりあえずスマートホンを開いてtwitterを見た。すると、有明のビックサイトあたりが、憲法集会と、それをけん制する右翼の街宣車と、コミックシティなるイベントの三つ巴で、阿鼻叫喚の様相を呈しているという情報が流れてきた。それで、暇だったので、ぼくはりんかい線国際展示場駅を目指した。新宿まででてきたのはまったくの無駄になった。

 

大崎まで山の手線で出てりんかい線に乗り換えたら、それはひどい混み具合だった。twitterで見たとおり、スーパーコミックシティに向かう女性の漫画ファンと、憲法集会に向かう年配の左翼で車両はすし詰め状態で、呼吸をするにも苦しいくらいだった。女性達は慣れているのか諦めているのか比較的静かだったが、老人たちは口々にすごいだの痛いだのと文句を言っていた。これは彼らのうちそこそこの数が地方から今日の憲法集会のために上京してきたこともあると思う(もしかしたらそもそも電車に乗ることすら珍しいのかもしれない)。かわいそうだったのはお台場あたりで休日を過ごそうとしていたらしい普通の家族連れで、とくに小さい子供の中には、泣き出す子もいて、哀れだった。

 

りんかい線国際展示場駅のホームは地下深くにある。到着と同時に、人々がとめどなくホームに流れ出て、エスカレーターへ向かうのを、ぼくは後からついていった。この駅の地上階までのエスカレーターは異様に長いのであるが、そこに驚くほどの数の中高年者が並んでいる様は、なかなかの見ものだった。なぜかしらけっこうな数の男性がポケットがいっぱいついたフィッシングのようなものを着用していた。ところどころに黄色や緑色の旗をもっている人がいた。みな、団体でやってきたようだった。エスカレーターを上りきった改札の前でも、旗を手にたっている人が何人もいて、メンバーの到着をまっていた。そしてメンバーがそろうと、列になって改札を出て、ビッグサイトとは逆の方面へ、連れ立って歩いていった。老人達の列はひとときも途切れることなく続いていて壮観であった。逆にビッグサイト方面へ歩いていく女性達の数は想像しているほど多くなく、むしろビッグサイトから駅へ帰ってくる女性達が目立った。時間は12時半を少し回ったくらいだった。憲法集会は13時からと聞いていた。ちょうど来場のピークだったのだと思う。女性達は朝早くから来て、目当てのサークルを回り終わったころだったのだろう。これらの壮大な人の流れを見ながら、ぼくは途方にくれた。新宿からなんとかやってこれたのはよかったが、どう考えても、どくはどちらの集団にも属すことがない人間だった。遠くからは右翼の街宣車君が代を流しているのが風に乗ってたしかに聞こえてきた。ひとまずぼくはビッグサイトへ行くことにした。

 

ビッグサイトに向かいながらも、やることがなにも思い浮かばなかった。人は思っていたほどには多くなく、ぼくは少し気が抜けてしまった。有明の広い土地に強く風が吹いていた。タワーマンションが何棟もそびえているのが見えたが、男の姿は片手で数えられるほどしか見かけなかった。どことなく気まずい感じを覚えた。ビッグサイトの前には夏のコミケのときによく話題にあがるカフェ・ヴェローチェがあった。せっかくなので寄って行こうかとも考えたが、お金が無駄になるので、やめた。

 

国際展示場の駅前に戻ると、機動隊の車が2台と、プロテクターを身につけた警察官が何人か見受けられた。さっきは憲法集会へ向かう人の列で気づかなかった。ぼくも憲法集会へ行こうかと思ったがなにぶん初めての参加となるので心が重かったを。そこで駅前で待ち合わせでもしているふりをしながら心を固めようとしたが、まだぽつぽつと憲法集会の方面へ向かう人々がいて、彼らがことごとく中高年以上の人々であったったので、余計に心細くなった。ぼくは集会へ出てもよくない意味で目立ってしまいそうだったし、それでもし誰かに話しかけられでもしたら、挙動不審になって苦しい思いをするだけなのは目に見えているので、あきらめて駅へ向かった。滞在時間は15分もなかったと思う。

 

今年は日本国憲法の施行から70年だった。北朝鮮の情勢もあった。帰ってニュースを見ていたら安倍首相がオリンピックのある2020年までの改憲を目指すと表明したとあった。

 

以上でございます。