赤坂迎賓館 (東京ちんこ建築)
迎賓館には和風の別館もあり、こちらも見学した。谷口 吉郎(たにぐち よしろう)の設計で、特徴的な六角形の照明などはホテルオークラを思わせた。ぼくは失われてしまったホテルオークラのロビーを思い出した。
内部の撮影は禁止だったので写真は手元に残っていないが、一分の隙もない贅沢な材と造りで表現された谷口吉郎流の和の空間だった。
谷口吉郎は金沢の出身である。ぼくは一度だけであるが旅に行ったことがある。一度だけであるからもちろん土地に詳しいわけはないし取り立てて興味をもって調べて見たというようなこともない。ぼくの友だちに代々政治家、官僚を排出している日本でも有数の名家の者がいるが彼は金沢のことを褒めていた。一日で歩いて回れる都市のコンパクトさが気に入ったと言っていた。確かにそうだった。吉田健一がこの土地の名前をつけた小説を書いている。ぼくは金沢が好きだ。金沢には谷口吉郎の息子の谷口吉生の鈴木大拙館がある。
迎賓館の本館は宮内庁建築を多く手がけた片山東熊(かたやま とうくま)の手による設計でよく知られているようにかつての東宮御所であるが、これを見た明治天皇は一言「贅沢すぎる」と言ったそうである。実際、その装飾の豪華絢爛さは、と、あまり意味もなく比べてみるが、ぼくの好んで見る辰野金吾の銀行建築などとは段違いである。片山自身は明治天皇の一言を聞いて病気がちになったという。
片山東熊はかのジョサイア・コンドルの一番弟子で辰野金吾の同期である。奈良国立博物館や京都国立博物館も彼の設計である。ぼくはいずれも見たことがある。