熱病に浮かされて東京の街をさまようぼく
ぼくは、池袋北口の喫茶店で、周りを中国人に囲まれて、萩原朔太郎の詩を、読んでいた。
その他、本は、いろいろ買った。ニーチェと、三島と、ルバイヤートと。
朔太郎の詩を、読み続けることは、できなかった。中国人たちは、とても大きな声で、話していた。
ぼくは、秋葉原で買ってきた、延長コードのパッケージを開けて、空になった箱を、くしゃくしゃにして、灰皿につめた。
いつものように、ものを買い込んだが、それらを読んだり、使ったりする時間はあるのかどうか、分からなかった。
いつものように、街を転々と歩いてきたが、それで、なにかが満たされたわけでは、なかった。
ぼくは、なにかを求めていたが、それがなにかは、分からなかった。
街を歩けば、それがなんだか分かるような気がしていたが、それは間違いのような気がした。
朝から、部屋を出て、東京の街を、転々としていたが、まるで、熱病に浮かされていたようだった。
ぼくは中国人に囲まれて、虚空を見つめて、煙草を吸っていた。